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「吉田松陰の恋」24年経て再版 古川薫さん 膨大な句集からひもといた愛(産経新聞)

 直木賞作家、古川薫さん(84)が24年前に出版した「吉田松陰の恋」(文春文庫)が再版され、話題を集めている。生涯独身を通した松陰だが、実は獄中で恋愛していたというのだ。「松陰が遺(のこ)した山のような和歌と俳句集の中から恋を詠んだ数作が見つかったのです。獄中にいた松陰は当時、青年期。恋愛感情があっても不思議ではない」と古川さんは語る。(戸津井康之)

 原題は「野山獄相聞抄」。昭和53年、別冊文芸春秋で発表されるや物議をかもす。30歳で獄死するまで思想家として一生を貫いた松陰の恋愛を取り上げたことに対する信奉者らの反発は強かった。「生涯独身を通した松陰の恋愛など冒涜(ぼうとく)だという抗議文書が何十通も届きましてね」と古川さんは苦笑した。

 外国船で密出獄しようとした松陰は国元の監獄に入れられ、ここで女囚の高須久子と出会う。2人は惹(ひ)かれ合うが、老中暗殺を企てたとして江戸の監獄へ移されることになった松陰に久子ははなむけの句を贈る。

 「手のとはぬ雲に樗(おうち)の咲く日かな」

 これに対し松陰は一通の封書を久子に手渡す。中にはこんな句が入っていた。

 「一声をいかで忘れんほととぎす」

 創作ではない。実際に獄中で書かれた俳句を探し、そのやりとりから純愛で結ばれた2人の心情を描きあげた。「松陰については大勢の歴史家が資料を調べ尽くしていたが、句集まで読み込んだ者はいなかったと思う。膨大な連句集の中から発見した時はうれしかった」と振り返る。

 松陰の故郷・山口でも小説発表当初は強い抵抗があったというが、「今では松陰像を探る史実として受け入れられています」。地元の協力で映画「獄(ひとや)に咲く花」が製作され、現在公開中だ。

 古川さんは元山口新聞記者。平成3年、「漂泊者のアリア」で直木賞受賞後も故郷にこだわり幕末の長州を舞台にした歴史小説などを数多く手掛けた。松陰の恋愛も、この徹底し取材する姿勢から歴史を掘り起こした功績のひとつだ。

 「箱根山越すとき汗の出やせん 君を思ひてふき清めてん」

 江戸送りを知った久子は必死の覚悟で松陰に餞別(せんべつ)のハンカチを贈る。松陰が久子の思いに答えた句だ。

 「恋もした松陰の青春を知ってもらえたら」と古川さんは語った。

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